理想の弟になれなかったことへのイロイロ

姉と暮らしたのは僕が中学を卒業するまでの間だけど、僕が5歳位の頃には、彼女は料理や洗濯等の家事をこなし、主婦の役割をこなしていた。
母が死んで、三つ上の姉はそんな役割を担ってしまったのだ。
だからまあ、感謝はしている。
それは嘘ではない。
それでも、僕らは仲が悪い。

普通、そんな境遇で育てば姉弟仲というのはとても良好ではないかと思う。

しかし、どうしても友達になれない奴がいるように僕らは仲良しにはなれない。多分、これからもずっと。

中学生の頃、僕は確か槇原敬之が好きだった。麻薬で捕まる少し前だ。
グレイ等のビジュアル系全盛である。
何故におまえはあの綺麗な兄ちゃん達ではなく何とも言えないオッサンの歌を好むのだ。
そんな事を言われた。
僕はその頃、文系オタクで暇があれば本を読んでいたし、テレビゲームをしていた。
姉はテレビゲームと小難しい小説に興味も理解もなかった。

彼女は、特にポピュラーな物を好んだ。
友達との会話はテレビゲームや小説ではなく、流行のドラマや売れ線の音楽や格好いい先輩が主流だったんだろう。
友達との関係が主に臆病な姉の世界を構成していて、そして今にして思えば僕は彼女の世界にいなかったのだ。
だから、僕の言動は彼女にとって異世界の住民の様に奇妙に見えたのだろう。
怠惰で、理解不能の趣味を持ち、頭がいいわけでもない。

もし、僕が快活で、活字なんてまったく興味も無く、流行の歌を上手に歌えるような少年だったら、すこぶる仲のいい姉弟になれたのだろうか。

それもこれも、全部今更だけどね。