胡散臭い男への憧れ。あるいは中二病の痣。
僕の中二病は30代を迎えるずっと前に根治してしまって、乾いた諦観と倦怠感がその後の僕を蝕み続けている。
だけど、自分の中に中二病の痕もないではない。
これは、すでに皮膚の一部と化してしまった火傷の痕に似て、今後はこのまま僕の一部としてつきあっていかねばならないのだろうと思っている。
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具体的に言えば、胡散臭い男になりたい欲求だ。
立ち位置不明の怪人がしばしば創作に出てきてトリックスターとして物語を撹乱するが、まさに学生時代の僕はそんな男にこそなりたかった。
そしてなれなかった。
心の底を読ませないように突飛な振る舞いを好み、目つきで怪しさを演出する。
私服で外出する際はやはりどこか型を外れた服装を好む。
普段、勤勉に仕事し、メモを取り、こまめな連絡調整に定評がある社会人として、仕事上の知り合いとアロハシャツに下駄で出会うと気まずいのだけど、まあ、それでも上手く調整を付けてやっている。
夢は覚めたが、その残り香はきっと死ぬまで僕を縛る。